平成19年6月18日に内閣官房より「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」が公表されました。
これは、多くの企業が企業倫理として、暴力団をはじめとする反社会的勢力と関係を持たないことを掲げて、さまざまな取組みを進めていながらも、暴力団関係企業等と知らずに結果的に経済取引を行ってしまう可能性があること、また、反社会的勢力は、最終的には企業自身に多大な被害を生じさせるものであることなどから、反社会的勢力との関係遮断は企業防衛の観点からも必要不可欠な要請となっています。
本指針は、このような認識のもと、企業が暴力団などの反社会的勢力との関係遮断を進める際の具体的な対応策を示すものです。
以下に本指針の概要を記します。
1. 基本原則
- 組織としての対応
- 外部専門機関との連携
- 取引を含めた一切の関係遮断
- 裏取引や資金提供の禁止
2. 基本原則に基づく対応(抜粋)
(1)反社会的勢力による被害を防止するための基本的な考え方
- 反社会的勢力による不当要求には、企業の倫理規定、行動規範、社内規則等に明文の根拠を設け、担当者や担当部署だけに任せず、代表取締役等の経営トップ以下、組織全体として対応する。
- 従業員の安全を守る。
- 暴力追放運動推進センターや弁護士等の外部専門機関(以下「外部専門機関」という)と緊密な連携関係を構築する。
- 不当要求に対しては、民事と刑事の両面から法的対応を行う。
- 事実を隠蔽する裏取引は絶対に行わない。
- 資金提供は絶対に行わない。
(2)平素からの対応
- 代表取締役等の経営トップは(1)の内容を基本方針として社内外に宣言し、その宣言を実現するための社内体制の整備、従業員の安全確保、外部専門機関との連携等を行い、その結果を取締役会等に報告する。
- 不当要求が発生した場合の対応を統轄する部署(以下「反社会的勢力対応部署」という)を整備する。
- 反社会的勢力とは一切の関係を持たない。相手方が反社会的勢力であると判明した時点や反社会的勢力であるとの疑いが生じた時点で、速やかに関係を解消する。
- 反社会的勢力の情報を集約したデータベースを構築する。
- 外部専門機関の連絡先や担当者を確認し、平素から担当者同士で意思疎通を行い、暴力団排除活動に参加する。
(3)有事の対応(不当要求への対応)
- 不当要求がなされた場合には、当該情報を速やかに反社会的勢力対応部署へ報告・相談し、さらに、速やかに当該部署から担当取締役等に報告する。
- 不当要求がなされた場合には、積極的に外部専門機関に相談する。
- 不当要求がなされた場合には、代表取締役等の経営トップ以下、組織全体として対応する。
- 不当要求が、事業活動上の不祥事や従業員の不祥事を理由とする場合には、速やかに事実関係を調査する。調査の結果、指摘が虚偽であると判明した場合には、その旨を理由として不当要求を拒絶する。また、真実であると判明した場合でも、不当要求自体は拒絶し、別途、当該事実関係の適切な開示や再発防止策の徹底等により対応する。
3. 内部統制システムと反社会的勢力による被害防止の関係
ある程度以上の規模の株式会社の取締役は、善管注意義務として、事業の規模・特性等に応じた内部統制システムを構築し、運用する義務があると解されています。
反社会的勢力による不当要求には、企業幹部、従業員、関係会社を対象とするものが含まれます。不祥事を理由とする場合には、事案を隠ぺいしようとする力が働きかねません。このため、反社会的勢力による被害の防止は、業務の適正を確保するために必要な法令等遵守・リスク管理事項として、内部統制システムに明確に位置付けることが必要です。
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なお、内閣官房の解説によれば、本指針はあらゆる企業を対象として、反社会的勢力による被害を防止するための基本的な理念や具体的な対応を定めたものであり、法的拘束力はないとしています。
また、運用面においては、犯罪対策閣僚会議幹事会の申し合わせにより、関係府省は、今後、各企業において本指針に示す事項が実施され、その効果が上がるよう普及啓発に努めることとするとされています。
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