今回の地価公示においては、全国平均で住宅地、商業地ともに2年連続の上昇となったが、着目すべき地価動向としては、地価上昇の広がりが利便性や収益性の高い地域を中心として見られ、その他の地域との差異が引き続き鮮明となってきていること、前回高い上昇率であった都心部においては、前回の上昇率を下回る地域もみられ、特に、昨年後半においては、上昇基調が鈍化していることがあげられる。また地方圏においては市街地整備や観光需要の増大等により収益性が向上した一部の地域を除き、依然として下落基調が続いていることである。
大都市圏における基調の変化は、都心部における急激な地価の上昇に需要が対応できず、新たな価格の調整局面に入っていることも考えられるが、サブプライム問題に端を発した世界規模の金融資本市場の変化、米国経済の減速見通しによる、景気の先行きに対する懸念や、個人所得の伸び悩みによる影響も出始めているものと考えられ、これまで大都市圏を中心に堅調さを維持してきた不動産流通市場においても、成約件数の減少、販売在庫の増加等の変化が鮮明となってきており、予断を許さない局面となっている。
今後、全国レベルでのバランスの取れた地価の回復のためには、経済の不透明感を払拭するとともに、地方経済の活性化を進め国民生活の基盤である土地・住宅に関する多様なニーズに応える政策を推進し、不動産流通市場のさらなる活性化を図ることが不可欠である。現在、長期優良住宅普及促進法案が提出されるなど、住宅履歴書の整備を始め、良質なストックの拡大や流通についての課題が幅広く検討されているが、これらとあわせて、不動産流通を促進する税制の継続実施および住宅投資等に対する幅広い政策面での支援策の強化がさらに求められる。 |