FRK会報
会報No.89(2008年JANUARY)

年頭にあたって

不動産流通活性化へ向け、新たな情報インフラの活用と積極的な政策提言を


年頭にあたって謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

皆様には、佳き年をお迎えのこととお慶び申し上げます。

さて、昨年を振り返りますと、わが国の経済は、輸出の増加、企業収益の改善、企業の設備投資の増加により緩やかな景気回復基調が続きましたが、サブプライム問題に端を発する金融資本市場への影響、米国経済の減速見通しや原油価格の高騰等により、景気の先行きに対する懸念材料が出てまいりました。

不動産市場は、首都圏を中心とした都心回帰の動き、旺盛なマンション需要不動産投資の拡大により活発な動きを見せ、地価も全国で16年ぶりに上昇となり、都心部では高い上昇率を示す地点も出てきました。しかしながら、下期に入りますと個人所得の回復の遅れ、金融資本市場の変化などにより、従来の状況に比べやや息切れした感じとなりました。また、改正建築基準法の施行による新規着工戸数の急激な減少も見られました。

このような経済環境のもと、昨年末発表された税制改正大綱におきまして、当協会の重点要望事項でありました「相続時精算課税制度の住宅取得等資金贈与における特例措置」等について期限の延長が図られ、段階的税率引き上げの条件つきではあるものの「土地の売買による所有権移転登記の登録免許税の税率特例」についても適用期限の延長が図られたことは、課税強化に伴う不動産流通市場に与える影響について一定の配慮がされたものであります。また、「長期耐用住宅促進税制」の創設において、既存住宅が適用対象とされていないことは残念でありますが、良質な住宅の形成に寄与し、今後の住宅流通市場に好影響を与えるものと期待されます。

不動産流通市場の円滑化、活性化に向けた政策面では、昨年5月に、自民党の住宅土地調査会から「住生活基本法」の基本理念であるストック型社会における豊かな住生活の実現に向けた「200年住宅ビジョン」の提言がなされました。現在、国土交通省において、「長期耐用住宅整備促進法(仮称)」の法案提出の準備が進められており、これに関連して「住宅履歴書」の整備をはじめ長期にわたり住宅が維持され流通するに際しての課題が幅広く検討されております。本年は、その具体化に向けての政策が、不動産流通業界にとって流通市場の整備・拡大につながる影響の大きい課題であるとの認識のもと、昨年末当協会内に設置した「流通促進研究会」において、既存住宅流通市場の活性化に向けた具体的な提言を取りまとめてまいりたいと考えております。


また、本年は、新たな不動産情報インフラが始動する年であります。

当協会のインターネットによる消費者への不動産物件情報の提供サイト「ホームナビ」については、業界を代表する不動産物件情報サイトとすべく、IT化の進展を踏まえ次期システムの開発を進めておりますが、消費者に物件探しの利便性と取引の安全性を提供するサイトとして新たにスタートいたします。さらに、全国4機構による集約データベースを含む東日本不動産流通機構の次期レインズシステムも開発が進んでおります。これらの新たな不動産情報インフラを皆様が最大限活用されることにより、これからの不動産流通の活性化に大きく貢献するものと期待しております。

不動産流通市場の信頼をさらに高めていくための研修広報活動は、昨年「実力アップ講座」を中心に「新任従業者教育研修」「中堅営業管理職研修」の階層別研修に加えて「金融商品取引法の実務講習」などを実施し、多くの会員のご参加をいただきましたが、本年も、従業者の実務知識の向上、コンプライアンスの醸成に向けて、会員の皆様のご要望を踏まえながら研修内容等を更に充実させて実施してまいります。また、不動産流通の活性化への取り組みについての消費者の関心を高め、不動産取引についての理解を深めるため、昨年に続き「FRK住まいと暮らしのセミナー」を開催するなど、一般消費者への広報活動をさらに拡充してまいりたいと考えております。

安全な取引の実現を目指して策定した不動産売買契約書および重要事項説明書などのFRK標準書式は、会員会社の皆様にご利用いただき、着実に浸透してきております。引き続き多くの会員会社にご利用いただき、普及することによって、取引の安全性・透明性を高め、消費者からの信頼をより確実なものとなるよう期待しております。

近年は、不動産の金融商品化など取引の高度化、耐震偽装問題に端を発した建物の耐震性への消費者意識の高まり、消費生活用品安全法の改正や犯罪収益移転防止法の施行等社会的要請への対応など、不動産流通業界は多くの課題を抱えております。本年は、これらの課題に的確に対応しつつ、会員相互の結束のもと、不動産流通の促進と不動産流通業の発展に寄与してまいりたいと存じます。皆様方のご理解、ご協力のほど、引き続きよろしくお願いいたします。

最後に会員の皆様のご健勝と益々のご活躍を心よりお祈り申し上げまして年頭のご挨拶とさせていただきます。

[会報目次]
[年頭のご挨拶] [平成20年度国土交通省税制改正大綱要旨]
[「不動産業における犯罪収益移転防止及び反社会的勢力による被害防止のための連絡協議会」の設立について]
[「日米不動産業主脳交流会議」開催] [「流通促進研究会」の設置について]
[「人材育成検討委員会」の設置について] [平成19年度中堅営業管理職研修を実施]
[近畿支部 平成19年度中堅営業管理職研修を実施
[FRKNOW] [書籍紹介] [INFORMATION]