住宅関係税制改正概要
■住宅の長寿命化(「200年住宅」)促進税制の創設
持続可能な社会の実現を目指し、良質な住宅を大切に長く使うことによる地球環境への負荷の低減を図るとともに、建替えコストの削減による国民の住宅負担の軽減を図るため、一定の基準に適合する認定を受けた長期耐用住宅(仮称)(「200年住宅」)について、以下の特例措置を講ずる。
登録免許税
税率を一般住宅特例より引下げ
- 所有権保存登記
(一般住宅特例:0.15%、本則:0.4%)
- 所有権移転登記
(一般住宅特例:0.3%、本則:2.0%)
不動産取得税
課税標準からの控除額を一般住宅特例より拡大
- 1,300万円控除
(一般住宅特例:1,200万円控除)
固定資産税
新築住宅に係る減額特例の適用期間を一般住宅より長期間設定
- 戸建て:5年間1/2
(一般住宅特例:3年間1/2)
- マンション:7年間1/2
(一般住宅特例:5年間1/2)
■住宅に係る省エネ改修促進税制の創設
地球温暖化防止に向けて家庭部門のCO2排出量の削減を図るため、既存住宅において省エネ改修を行った場合の以下の特例措置を創設する。
所得税(→表)
- 平成20年4月1日から平成20年12月31日までの間に、居住者が自己の居住の用に供する家屋について省エネ改修工事を含む増改築工事を行った場合、その住宅ローン残高(上限1,000万円)の一定割合を5年間にわたり所得税額から控除する(現行の住宅ローン減税(増改築等)との選択制)。
<対象となる省エネ改修工事>
(1)居室のすべての窓の改修工事、または(1)と合わせて行う(2)床の断熱工事、(3)天井の断熱工事、(4)壁の断熱工事で、改修部位がいずれも現行の省エネ基準以上の省エネ性能となり、かつ改修後の住宅全体の省エネ性能が現状から一段階以上上がると認められる工事内容であって、その工事費用が30万円を超えるもの。
- 現行の住宅ローン減税の対象となる増改築等の範囲に、省エネ改修工事を追加する。
表 現行の住宅ローン減税と省エネ改修促進税制の比較
※特定の省エネ改修工事:
改修後の住宅全体の省エネ性能が現行の省エネ基準相当に上がると認められる内容の省エネ改修工事。
固定資産税
平成20年4月1日から平成22年3月31日までの間に、平成20年1月1日に存する住宅(賃貸住宅を除く)について30万円以上の省エネ改修工事を行った場合、当該家屋に係る翌年度分の固定資産税額(120u分までを限度)を1/3減額する。
<対象となる省エネ改修工事>
(1)窓の改修工事、または(1)と合わせて行う(2)床の断熱工事、(3)天井の断熱工事、(4)壁の断熱工事で、改修部位がいずれも現行の省エネ基準に新たに適合することになるもの。
■新築住宅に係る固定資産税の減額措置の延長
住宅取得者の初期負担の軽減を通じて、良質な住宅ストックの形成と居住水準の向上を図るため、新築住宅に係る固定資産税の減額措置の適用期限を2年延長する。
120u相当部分につき、3年間(中高層耐火建築物である住宅は5年間)税額を1/2に減額
■住宅取得等資金に係る相続時精算課税制度の特例措置の延長
世代間の資産の有効活用による住宅投資の活性化、住宅取得者の自己資金の充実による居住水準の向上を図るため、住宅取得等資金について、相続時精算課税制度の非課税枠2,500万円に1,000万円を上乗せするとともに、65歳未満の者からの贈与も対象とする特例措置の適用期限を2年延長する。
(→図1)
図1
■新築住宅のみなし取得時期等に係る不動産取得税の特例措置の延長
住宅の流通コストの軽減等を通じて、住宅取得負担の軽減と居住水準の向上を図るため、以下の特例措置の適用期限を2年延長する。
- 住宅販売業者等が新築した家屋のみなし取得時期に関する特例措置
(本則:新築から6か月以内に売却すれば非課税→特例で1年まで延期)
- デベロッパー等が取得した住宅用地の減額措置
(本則:土地取得から2年以内に竣工すれば減額→特例で3年以内(100戸以上の大規模マンションの場合は4年以内)に延期)
■住宅に係る耐震改修促進税制の拡充
本税制について、耐震診断から設計、改修までを総合的に支援する補助制度を有する市町村を適用対象地域とするよう運用を改善する。
主要事項以外の項目
事業用建築物に係る耐震改修促進税制の2年延長(取得税、法人税)
土地関係税制改正概要
■土地の売買による所有権の移転登記等に係る登録免許税の特例措置の延長(登録免許税)
土地の取得コスト等を軽減することにより、土地のさらなる流動化を促進し、土地取引の活性化を図る観点から、土地の売買による所有権の移転登記等に係る登録免許税の特例措置について、次の通り、平成20年度は現行の税率を維持し、平成21年度以降は税率を見直した上で、その適用期限を3年延長する。
(→図2)
図2
■Jリート及びSPCに係る登録免許税の特例措置の延長(登録免許税)
地域経済の活性化や優良な都市ストックの形成を促進するため、Jリート等が不動産を取得する場合の登録免許税の特例措置について、平成21年度の税率を見直した上で、2年延長する。
■住宅以外の家屋に係る不動産取得税の特例措置の創設(不動産取得税)
都市再生緊急整備地域、都市再生整備計画の区域または中心市街地の区域において取得する一定の新築家屋(住宅の用に供するものを除く)に係る不動産取得税について、当該家屋の価格の10分の1に相当する額を価格から控除する課税標準の特例措置を2年間に限り講ずる。
平成20年度 税制改正大綱に関する当協会理事長コメント |
社団法人 不動産流通経営協会
理事長 岩崎 芳史 |
社会保障の安定財源確保の要請をはじめ、さまざまな経済・社会の構造変化に伴う財政上の諸課題に直面するなか、今般発表された税制改正大綱は、当業界においては、不動産流通市場の活性化を図る観点から、税制面でも所要の配慮がなされたものと受けとめたい。
具体的には、当協会の重点要望事項でもあった「相続時精算課税制度の住宅取得等資金贈与における特例措置(贈与者の年齢要件の緩和及び1,000万円特別枠)」「新築住宅に係る固定資産税の税額2分の1相当額減額の特例措置」等について期限延長が図られ、段階的税率引き上げの条件付きではあるものの「土地に関する売買による所有権移転登記の登録免許税の税率特例」についても期限延長が図られたことは、不動産流通市場に与える影響について、一定の配慮がなされたものとして評価したい。
また、「長期耐用住宅促進税制」の創設において、既存住宅が適用対象とされていないことは遺憾であるが、良質な住宅ストックの形成に寄与し、ひいては今後の住宅流通市場の活性化に寄与する税制として期待され、「200年住宅ビジョン」具現化の第一歩として評価される。
さらに、「住宅の省エネ改修促進税制」の創設も、減税対象が改修費用をローン借入れした場合に限定されたとはいえ、地球温暖化対策への貢献策として意義があると考える。
最後に、改めて、今般の税制改正にご尽力いただいた、関係の国会議員の諸先生方ならびに国土交通省など関係省庁の皆様に厚く感謝申し上げたい。
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