FRK会報
会報No.86(2007年JULY)

「犯罪収益移転防止法」の概要

従来、金融機関等に義務づけられていた本人確認義務等が宅建業者・不動産特定事業者にも適用されることになりました。これを規定した「犯罪収益移転防止法」の概要を以下に掲載します。
【犯罪収益移転防止法制定の背景】

従来、金融機関等に対して、金融機関等本人確認法および組織的犯罪処罰法により、本人確認義務、本人確認記録の作成・保存義務、疑わしい取引の届出義務が課されておりました。ところが近年、テロ資金その他の犯罪収益の移転に係る国内の実態および国際機関であるFATF勧告に基づく国際的な対策強化の動向に鑑み、前述の義務を負う者の範囲を宅建業者、不動産特定共同事業者を含む43業種の特定事業者に拡大されることになりました。これらの内容は「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(犯罪収益移転防止法)として制定され、平成19年3月31日に公布されました。

施行の附則では、公布後1年以内に施行される予定です。

現在、宅建業者等の特定事業者に係る義務付け規定の施行に向けて、政省令、及び「疑わしい取引のガイドライン」の策定作業が進められております。

(注) 特定事業者とは次のもの ※43業種(略)
宅地建物取引業法第2条第3号に規定する宅地建物取引業者

犯罪収益移転防止法(抜粋)

1. 本人確認義務(第4条)

特定事業者は顧客またはこれに準ずるものとして政令で定める者(以下「顧客等」という)との間で、特定業務のうち特定取引を行うに際しては、運転免許証の提示を受ける方法その他主務省令で定める方法により、当該顧客等について、本人特定事項の確認を行わなければなりません。

(注) 「特定業務」とは、宅地建物取引業のうち、宅地(宅地建物取引業法第2条第1号に規定する宅地をいう)若しくは建物(建物の一部を含む)の売買又はその代理若しくは媒介に係るもの
「特定取引」とは、宅地または建物の売買契約の締結その他の政令で定める取引

2. 本人確認記録の作成義務等(第6条)

特定事業者は、本人確認を行った場合には、本人特定事項、本人確認のためにとった措置その他の記録を作成しなければなりません。
また、特定事業者は、本人確認記録を、特定取引に係る契約が終了した日から7年間保存しなければなりません。

3. 取引記録等の作成義務等(第7条)

特定事業者は、特定業務に係る取引を行った場合には、少額の取引その他の政令で定める取引を除き、顧客等の本人確認記録を検索するための事項、当該取引の期日及び内容その他の事項に関する記録を作成しなければなりません。
また、特定事業者は、取引記録を、当該取引または特定受任行為の代理等の行われた日から7年間保存しなければなりません。

4. 疑わしい取引の届出等(第9条)

特定事業者は、特定業務において収受した財産が犯罪による収益である疑いがあり、または顧客等が特定業務に関し組織的犯罪処罰法第10条の罪若しくは麻薬特例法第6条の罪に当たる行為を行っている疑いがあると認められる場合においては、速やかに、所定の事項を行政庁に届け出なければなりません。

(注) どのような場合に届け出る必要があるかについては、ガイドラインで定められます。

また、特定事業者は、疑わしい取引の届出を行おうとすること、または行ったことを当該疑わしい取引の届出に係る顧客等、またはその者の関係者に漏らしてはなりません。

(注) 「行政庁」とは、宅建業者の場合、宅建業法に基づく免許をした国土交通大臣又は都道府県知事となります。(第20条第1項第14号)

5. 監督・検査(第13条〜17条)

(1) 行政庁は、特定事業者がその業務に関して本人確認、疑わしい取引の届出等の義務に違反した場合、当該特定事業者に対して是正命令を出すことができます。(第16条)
行政庁は、本法の施行に必要な限度において特定事業者に対して報告徴収、立入検査等を行うことができます。(第13条〜第15条)
(2) 国家公安委員会の監督上の役割
ア. 国家公安委員会は、是正命令または本法に違反したことを理由とする他の法律の規定による監督上の措置に関し、意見を述べることができます。(第17条第1項)
イ. 国家公安委員会は、本法上の義務違反行為に関し、(ア)の意見を述べるために必要があると認められるときは、特定事業者に対して報告徴収、立入検査等を行うことができます。(第17条第2項、第3項)

[会報目次][犯罪収益移転防止法][200年住宅ビジョン]
[建築確認申請][特定住宅瑕疵担保責任][あんしん賃貸支援事業]
[委員会・部会委員名簿][会員の皆様へのお願い][米国の住宅売買取引]
[FRKNOW][レインズ活用状況][INFORMATION]