FRK会報
会報No.86(2007年JULY)

「200年住宅」普及を−自民・住宅土地調査会が「200年住宅ビジョン」を提言

自民党の住宅土地調査会(福田康夫会長)は、5月31日、耐久性の高い超長期住宅の普及促進を目指す提言「200年住宅ビジョン」を発表しました。自民党は、同ビジョンにおいて一戸建てやマンションなどの住宅の長寿命化を進めながら中古住宅の流通を活発化する政策を打ち出し、人口減少社会に対応した住宅政策の基本方針に位置付け、政府と一体で普及を目指す考えです。以下にその概要を掲載します。
自民党では昨年6月、「造っては壊す」従来の住宅施策からの転換を打ち出した「住生活基本法」が施行されたのを機に、人口減少社会への対応や環境負荷の軽減を目指して議論を重ねてきました。

「200年住宅」の利点は、まず、住宅を長寿命化すれば、建築廃材の排出削減につながり、環境負荷も軽減させられること。マンションでいえば、これまでの税法上の耐用年数(47年)から単純計算すると、建て替えサイクルが4分の1となるため、建設廃棄物の削減やセメントや鉄といった資源の有効活用が可能になります。当然、建設・解体コストの圧縮も期待できます。自民党では、長寿命化で初期建設コストが20%割高になったとしても、国民の住居費負担は従来の3分の2に縮減すると試算しています。

一方、寿命が長くなる分、大地震に遭遇する確率も高まるため、まずハード面では、材質面、耐震構造も含め大幅に性能を引き上げる必要があります。そのため、更新頻度の高い配管・内装設備(スケルトン)を構造躯体(インフィル)から分離する構造としたり、ニーズに合わせて間取りや仕様を変更しやすい工夫や、既存住宅市場において取引きされやすい普遍的な住戸プランへの配慮も必要であると提言しています。

また、これら新築時の技術的なガイドライン策定とあわせて、住宅の長寿命化を進めながら中古住宅の流通を促すための提言として、

(1)200年後を見据えた維持管理の目安を盛り込んだガイドラインの策定
(2)新築時の設計・施工内容やリフォーム履歴などを明示する「家歴書」の制度化
(3)リフォーム支援体制の整備やリフォームローンの充実
(4)中古住宅の価値を簡便客観的に評価するためのガイドラインづくり
(5)既存住宅の取引価格などに関する情報提供の充実
(6)住み替えや長寿命住宅に合った新たな住宅ローンの構築

などを挙げています。

税制面についても、既存住宅の取引では、個人間の売買を業者が仲介する場合は、消費税が課税されないが、業者が既存住宅を買い取り、リフォームして販売する場合は課税対象となっている点に異を唱え、「既存住宅の流通を促していくには何らかの誘導策が必要になる」として、住宅の長寿命化に見合った消費税、固定資産税等のあり方も検討するよう提言しています。

今後、政府・自民党はビジョンの具体化のため、来年の通常国会での関連法案の提出を目指すほか、国土交通省も20年度予算要求や税制改正要望にこれらを盛り込む方向で検討する予定です。


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