◆ 法律制定の背景と目的
この法律は、反社会的勢力によるマネー・ローンダリング(資金洗浄)の巧妙化や、マネー・ローンダリング対策・テロ資金対策の国際基準であるFATF勧告の改正など、犯罪による収益の移転をめぐる国内外の動向に対応するために制定されたものである。
目的は、本人確認等を適切に行うことで、事業者が不正な資金の移転に利用されるのを防ぐとともに、本人確認や取引記録の保存、疑わしい取引の届出を行うことによって、資金の流れを追跡できるようにすることである。
◆ 宅建業者の役割
法律の全面施行により、今までは、金融機関等に求められていたマネー・ローンダリングへの対応が、非金融機関であるクレジット会社・貴金属取引業者等とともに宅地建物取引業者に対しても、この法律において「特定事業者」として位置づけられる。そして「特定業務・特定取引」を行う際の顧客等の本人確認義務、本人確認記録・取引記録の作成・保存義務、疑わしい取引の届出義務が課せられることになった。
ただし、宅地建物取引業のすべての業務についての規制ではなく、『特定業務』は「宅地若しくは建物の売買又はその代理若しくは媒介にかかるもの」、『特定取引』は、「宅地若しくは建物の売買契約の締結又はその代理若しくは媒介」となっている。従って、宅地建物の交換や交換の代理・媒介、賃貸借の代理・媒介については対象から外されている。
◆ 不動産団体における対応
これらに対応するために、不動産業に関わる6団体は、昨年12月に「不動産業における犯罪収益移転防止及び反社会的勢力による被害防止のための連絡協議会」を発足させた。
具体的には、この連絡協議会において、不動産業各社においてマネー・ローンダリング防止のための責任者を設置することの申し合わせを行い、『犯罪収益移転防止ハンドブック』を発行した。
このハンドブックは、この法律が制定された背景から実務において注意すべき点に至るまでを解説するとともに、想定されることについてQ&A形式で詳細に記述している。
当協会においては、去る2月26日、東京都港区の発明会館にて、当協会顧問弁護士の松田弘氏を講師に迎え、「『犯罪収益移転防止法等』についての説明会」を開催。法律のさらなる理解と具体的な取り組みの対応を解説していただいた(セミナーの概要はFRK
NOWに掲載)。
実際の業務において、連絡協議会発行のハンドブック等を活用されることをお奨めします。法の趣旨をお客様に丁寧に説明し、理解を得ることによって業務が円滑に遂行され、宅建業者に課せられた役割を果たせるよう、ご協力をお願いします。
※不動産6団体
(社)全国宅地建物取引業協会連合会
(社)全日本不動産協会
(社)不動産協会
(社)不動産流通経営協会
(社)日本住宅建設業協会
(財)不動産流通近代化センター
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