FRK会報
会報No.84(2007年MARCH)

「既存住宅の流通促進に関する研究会」報告書概要版がまとまる

当協会では、ストック重視、「量から質」への政策転換を図る住生活基本法の施行を踏まえ、昨年9月に有識者からなる「既存住宅の流通促進に関する研究会」(座長:浅見泰司・東京大学空間情報科学センター教授)を設置して、3回の会合を開催して既存住宅の流通促進に向けた基礎的研究を行ってきましたが、2月に報告書を取りまとめました。以下に要旨を掲載します。
1. 多様な主体・多様なライフスタイルによる取得も含めた既存住宅流通量の推計及び多様な視点からの検討による「FRK既存住宅流通指標」を作成。今後も各年リリースを継続。

○本研究会では、多様なライフスタイル実現のためのセカンドハウスの買い増しや法人による取得などを含めた既存住宅流通総量の推計及び既存住宅流通指標の検討を行っている。その結果、既存住宅流通市場は順調な成長を見せ、平成15年時点の既存住宅流通量は約44万件、新築着工数を含めた総流通量の約28%を占めている。

○「FRK既存住宅流通指標」とは、「客観性」「安定性」「継続性」「速報性」「再現性」及び米国との同定義による比較を可能な限り担保することに重きを置き、検討を行ったものである。

<FRK既存住宅流通指標 >

図1. 本研究会における既存住宅流通指標の推移 

住宅の質をわかりやすく適切に表現・伝達し、消費者の安心感を高めるための住宅検査業界の仕組みづくりが必要。

○本調査では、その実態に関する情報量が少ない既存住宅の住宅検査の状況を把握するために、主要な検査機関へのヒアリング調査及び実際に検査を受けたユーザーを対象としたアンケート調査を実施している。その結果、既存住宅の流通の場では、法定の既存住宅性能表示制度ではなく、民間検査機関が任意で実施している住宅検査の活用頻度が高く、それに対するユーザーの満足度も高いことが明らかとなった。

○今後も民間任意の住宅検査の活用頻度は高まることが想定されるが、既存住宅の円滑な流通促進及び住宅検査市場の確立のためには、住宅検査業界における統一検査基準、倫理規定、住宅検査員育成プログラムの作成など、消費者の安心感を高め、住宅ストックの質の向上につながる仕組みづくりを公的機関等の支援も仰ぎつつ検討を行うことが必要である。

  • 住宅検査業界における検査項目、検査水準等の業界自主ルールの作成
  • 住宅検査員の育成プログラムの作成
  • 住宅検査結果における責任の所在の明確化及び住宅検査会社の責任保険制度の検討
  • 新築住宅性能表示制度の普及促進

図2. 住宅の評価・検査に対する満足度(民間任意の住宅検査を受けたユーザーへのアンケート調査結果)

3. 【市場データに基づくマンションの質と価格の関係の定量分析】
質の高い分譲マンションは資産価値が維持されやすい。

○ここでは、実態市場において、「住宅の価格」に「住宅の質」が「どの程度」影響を及ぼしているのかについて、市場データを用いて分譲マンションの定量的な分析を行っている。

○SRC(鉄筋鉄骨造)> RC(鉄筋造)>PC(プレキャスト造)> S(鉄骨造)の順に価格維持率は高くなっており、耐用年数が高い構造物ほど価格維持率が高いことが示されている。

○次に分譲マンションの品等については、品等が高いほど、価格維持率も高いことが示されている。

図3. 建物構造・品等別減価率

4. 【事例分析】
日米ともに取引事例比較法が主流。なお、米国ではエリアにより評価の視点、増減額の基準等が異なる。

○ 日米ともに、取引事例比較法が主流であるが、敷地面積にゆとりのある米国では、面積単価により単純に加減することがない。また、見晴らし、地下室の有無等、そのエリア特性、需要等により、評価される視点も増減額の基準も地域によって異なっている。一方、我が国では敷地面積が面積単価として直接的に反映されるほか、敷地の形状や道路付け等、細部に渡って評価され、さらに街並み等も大きな査定ポイントになっている。

(米国の事例)

  1. 住宅の敷地面積にゆとりのある米国の場合、敷地面積の増減等を単純に面積単価で増減させるような考え方はない。この点は、住宅の敷地に関し、敷地の形状、道路付け、方位等の状況に強い関心をもつ日本とは置かれている環境が異なるともいえる。
  2. 築後年数については、ほとんど考慮しないケースと、一定の定額的な評価減をするケースがみられ、全米統一ルール的なものは存在しないと思われる。なお、新築物件と既存物件間では一定の評価減を行うことが通例のようである。
  3. 部屋数、あるいは重視する設備等の重点項目にはウェートをかけて評価しているといえるが、逆に、細かな細部に関しては評価上、あまりこだわっていないともいえる。
  4. なお、米国内の各エリアにおける、不動産価格水準の差異は、単純な個別の建物価格の差異というよりは、そのエリア全体としての人気、需要ニーズの差異によるものがかなり大きいと思われる。

(日本の事例)

  1. 日本の場合は、そもそもの国土面積、敷地利用状況の違いから、住宅の敷地状況への関心が米国に比べて高いのは事実だが、一方で、その住宅地の街並み形成等の住宅環境面が、住宅の価格ベースに大きなウェートを占めていることも伺える。
  2. さらに、建物メンテナンスの良し悪し等が、同一エリア内の既存住宅売買における価格差に影響を与えることも、示唆されている。

■ 研究会委員名簿

座  長 浅見 泰司 東京大学 空間情報科学研究センター 教授
委  員 中川 雅之 日本大学 経済学部 教授
清水 千弘 麗澤大学 国際経済学部 助教授
保倉 俊一 社団法人 カーテンウォール・防火開口部協会 専務理事
松村  徹 株式会社 ニッセイ基礎研究所 金融研究部門上席主任研究員
村林 正次 株式会社 価値総合研究所 取締役・主席研究員
内藤  勇 社団法人 不動産流通経営協会 専務理事
オブサーバー 国土交通省関連部局担当官
社団法人 不動産流通経営協会 各委員長
(事務局) 社団法人 不動産流通経営協会
(調査業務委託先) 株式会社 価値総合研究所

■ 研究会の開催日時

第一回 平成18年9月20日/第二回 平成18年11月14日/第三回 平成18年12月13日

■ 詳細については、「ホームナビ」をご覧ください。

http://www.homenavi.or.jp/in_teigen.htm


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