■特定の居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除制度等の延長
- 住宅を売却する場合に譲渡損失が発生し、ライフステージに応じた適切な住替えが困難となっている者の円滑な買換えを支援するため、特定の居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除制度を3年延長する(平成21年12月31日までの譲渡に適用)。
- 住宅を譲渡しても住宅ローンを返済しきれない者の新生活への再出発を支援する観点から、特定の居住用財産の譲渡損失の繰越控除制度を3年延長する(平成21年12月31日までの譲渡に適用)。
→(参考)図1 繰越控除制度の仕組み
図1 繰越控除制度の仕組み
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※譲渡損失を繰越控除することにより、譲渡年(損益通算)から3年目までは所得と損失が相殺される。 |
■住宅用家屋の所有権保存登記等に係る登録免許税の軽減措置の延長
住宅取得時の負担を軽減する登録免許税の特例措置の適用期限を2年延長する(平成21年3月31日まで)。
(1)所有権保存登記 1.5/1,000(本則 4/1,000)
(2)所有権移転登記 3/1,000(本則 20/1,000)
(3)抵当権設定登記 1/1,000(本則 4/1,000)
■三位一体改革による税源移譲に伴う住宅ローン減税効果の確保に関する措置
三位一体改革の税源移譲が住宅ローン減税の控除額に与える影響を緩和し、引き続き無理のない負担での住宅取得を支援するため、平成19・20年の入居者を対象として、控除期間を15年に延長した制度と現行制度との選択適用を認める特例措置を講ずる。
<平成19年入居者の場合>
→ 表1 現行の住宅ローン減税と特例措置の比較
表1 現行の住宅ローン減税と特例措置の比較
■住宅のバリアフリー改修促進税制の創設
(1)高齢者等が安心して快適に自立した生活を送ることのできる環境の整備を促進し、高齢者等の居住の安定の早期確保を図るため、以下のバリアフリー改修工事を行った場合の特例措置を創設する。
1.廊下幅の拡幅 2.階段の勾配の緩和 3.浴室改良 4.便所改良 5.手すりの設置
6.屋内の段差の解消 7.引き戸への取替え工事 8.床表面の滑り止め化
○所得税
・平成19年4月1日から平成20年12月31日までの間に、一定の者(注1)が自己の居住の用に供する家屋についてバリアフリー改修工事を含む増改築等工事を行った場合、その住宅ローン残高(上限1,000万円)の一定割合を5年間にわたり所得税額から控除する(現行の住宅ローン減税(増改築等)との選択制)。
(注1)
1. 50歳以上の者、2.要介護又は要支援の認定を受けている者、3.障害者である者、4.
2.若しくは3.に該当する者又は65歳以上の者のいずれかと同居している者
→ 表2 現行の住宅ローン減税とバリアフリー改修促進税制の比較
表2 現行の住宅ローン減税とバリアフリー改修促進 税制の比較
・現行の住宅ローン減税の対象となる増改築等の範囲に、一定のバリアフリー改修工事を追加する。
○固定資産税
平成19年4月1日から平成22年3月31日までの間に、平成19年1月1日以前から存していた家屋のうち一定の者(注2)が居住するもの(賃貸住宅を除く)についてバリアフリー改修工事を行い、当該改修工事に要した費用から補助金等をもって充てる部分を除いた費用が30万円以上の場合、当該家屋に係る翌年度分の固定資産税額(100m2相当分までに限る)を3分の1減額する。
(注2)1. 65歳以上の者、2.要介護又は要支援の認定を受けている者、3.障害者である者
■印紙税の税率の特例措置の延長
不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例措置の適用期限を2年延長する。
■特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例措置の延長
多様なライフステージに応じた円滑な住替えを支援し、居住水準の向上、良質な住宅ストックの形成を図るため、居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例について、買換資産の床面積要件の上限(280m2)を撤廃するとともに、適用期限を3年延長する(平成21年12月31日まで)。
■特定の事業用資産の買換え等の特例措置の延長(所得税、法人税)
企業の土地等の買換えを活用した新規事業展開や事業拠点の再編を支援することで、都市再生・地域再生、企業による事業再構築を促進し、経済活性化、土地の有効利用を図る観点から、長期(10年超)保有の土地、建物等を譲渡し、国内にある土地、建物、機械装置等に買い換えた場合の特例措置を2年(平成20年12月31日まで)延長する。
○所得税・法人税:譲渡所得の課税繰延・買換資産の圧縮記帳(80%)
■特定住宅地造成事業等に係る土地等の譲渡所得に係る1,500万円特別控除制度の延長(所得税、法人税、個人住民税)
特定住宅造成事業等のために土地等を譲渡した場合の特例措置を2年(平成20年12月31日まで)延長する。
○所得税・法人税:1,500万円特別控除
《制度の適用要件》
(1)一団の宅地の造成に関する事業
【要件】開発面積5ha以上、開発許可、公共施設率30%以上、公募等
(2)土地区画整理事業として行われる宅地造成事業
【要件】開発面積5ha以上、公募等
(3)一団の住宅建設に関する事業
【要件】都市計画区域内、建設戸数50戸以上、床面積50m2〜200m2、公募等
■不動産証券化推進のための特例措置の延長(不動産取得税)
不動産の証券化を推進することにより、不動産の流動化や有効利用、経済の活性化を促進する観点から、Jリート・SPCの不動産取得税の課税標準の特例措置(2/3控除)を2年(平成21年3月31日まで)延長する。
平成19年度 税制改正大綱に関する当協会理事長コメント |
社団法人 不動産流通経営協会
理事長 三浦正敏 |
今般発表の税制改正大綱は、厳しい財政状況の中で、経済の活性化をさらに促進する観点から、不動産流通関係の税制面でも所要の配慮がなされたものとして歓迎したい。
具体的には、当協会の重点要望事項でもあった「特定の居住用財産の買換え等に関する特例」「住宅ローン減税の効果の確保」「住宅用家屋についての登録免許税の軽減措置」等の住宅に関する各特例措置の延長あるいは新制度導入が図られたことは、税制措置が住宅の購入、売却に与える影響について、充分に配慮されたものとして評価したい。
また、「特定事業用資産の買換え特例制度」の延長も、地価下落傾向がなお継続している地方都市の活性化等に寄与することが期待できる。さらに、バリアフリー改修促進税制が創設されたことは、その所得税の税額控除がローン部分に限定されたとはいえ、昨年度の耐震改修に関する制度創設に続き、良好な住宅ストックの形成に寄与し、ひいては、今後の住宅流通市場にも好影響を与える税制として期待される。
最後に、改めて、今般の税制改正にご尽力いただいた、関係の国会議員の諸先生方ならびに国土交通省など関係省庁の皆様に厚く感謝申し上げたい。 |
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