FRK会報
会報No.77(2006年JANUARY)

年頭にあたって

不動産市場の変化を捉え
流通業界の活性化に向けて積極的な対応を

社団法人 不動産流通経営協会
理事長 三浦正敏

年頭にあたって謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
皆様には佳き年をお迎えのこととお慶び申し上げます。

さて、昨年を振り返りますと、わが国経済は、原油高の影響による輸出の鈍化が見られるものの国内需要が堅調で、企業の設備投資意欲は強く、雇用・所得・環境の改善から消費も比較的堅調に推移しております。

不動産業界も昨年は、開発・分譲・流通・賃貸の各市場とも堅調を持続しており、また不動産投資市場においても、対象不動産の規模が拡大して、資産デフレ克服へ向け大きな役割を果たしつつあるといえます。

このような経済環境のもと、昨年末発表された与党税制改正大綱におきましては、財政再建、三位一体改革という難しい環境の中で、デフレ克服、不動産流通の促進を図る観点から一定の配慮がなされました。特に、当協会の重点要望事項であった「流通諸税の特例措置延長」に関し、土地の売買等による所有権移転登記の特例、および住宅関係を中心にした不動産取得税の特例措置の延長が図られたことは、住宅流通市場に与える影響に配慮されたものとして評価できるものであります。また、耐震改修に関する税制度の新設も、国家的な課題である耐震性向上による良好なストックの形成に寄与するものであり、流通市場にも好影響を与えるものと期待しております。

しかしながら、贈与税等の特例に関しては、住宅取得等資金に係る相続時精算課税制度の制度改善・延長が図られる一方で、現場等での制度浸透度、利用度の高かった5分5乗方式の特例が廃止されたことは残念であり、市場への影響等を注視してまいりたいと思います。

次に、税制以外の不動産流通市場の円滑化、活性化に向けた政策面では、国土交通大臣の諮問機関である社会資本整備審議会住宅宅地分科会より、「新たな住宅政策に対応した制度的枠組み」に関する答申がまとめられ、これを受けて国土交通省では「住宅基本法」(仮称)の策定作業を行っています。この「制度的枠組み」では、重点的に講ずべき施策分野として、住宅市場における重点分野の整備が掲げられ、その中で中古住宅流通の促進については、[安心して取引できる環境づくり]、[持家資産の流動化]、[円滑な住替えの支援]、[将来の維持管理・流通に向けた新築時の質の確保]などが具体的に示されています。この他、不動産証券化市場の拡大など不動産市場の変化にともない不動産事業者の業務内容、社会的役割などが高度化、多様化してきております。

当協会といたしましても、これらの変化を視野におきつつ、中古住宅流通市場の活性化に向けての条件整備等その具体的な方策の展開に向け、積極的に対応・協力してまいりたいと思います。

次に、昨年は情報化社会の一層の進展に向けての取組みとともに消費者との信頼関係の構築へ向け、数々の取組みを行ってまいりました。

主力事業である「ホームナビ」は不動産流通4団体で運営する「不動産ジャパン」や国内大手サイト等へのコンテンツ提供サイトとして、機能の強化などインフラ環境の改良を実施するとともに、個人情報保護法の施行に対応し、セキュリティレベルの維持・向上を着実に図ってきております。

また、11月には、当協会の企画による米国の不動産市場とインターネット業界視察団を派遣して、ニューヨークをはじめとして3都市を訪問し業界の動向を視察してまいりました。

その他の協会活動として、研修活動につきましては従来から実施の「実力アップ講座」を中心に「初任従業者教育研修」、「中堅営業管理職研修」の3種類の階層別研修に加えて、昨年は「住宅ローン講習会」や「信託受益権販売業務に関する知識習得研修会」などを実施し、いずれも多くの会員のご参加をいただくことができました。本年も、従業者の営業力向上やコンプライアンス醸成に向けて、会員の皆様のご要望を踏まえながら研修内容等を更に充実させて実施してまいります。

また、一昨年の12月にスタートした、消費者にとってより分かりやすく安全な取引の実現を目指して策定した不動産売買契約書および重要事項説明書などのFRK標準書式は、会員会社の皆様にご利用いただき、着実に浸透してきております。引き続き、本年も、多くの会員会社がFRK標準書式をご利用いただき、普及していくことによって、消費者からの信頼がより確実なものとなるように期待しております。

ところで、昨年は、アスベスト問題が大きく取上げられて社会問題になりましたが、さらに11月には、耐震強度偽装という前代未聞の事件が発生しました。本事件は、耐震強度偽装に係る関係者の良心の欠如が最大の原因と思われます。不動産業者は、国民の大切な資産を扱う重要な役割を担っており、その社会的責任を自覚し、法令順守に努めることが最も重要なことであります。

本年は、こうした視点から積極的な検討や提言をしてまいる所存ですので、関係各位のご理解、ご協力を引き続きよろしくお願いいたします。

最後に、会員の皆様のご健勝と益々のご活躍を心よりお祈り申し上げまして年頭のご挨拶とさせていただきます。


[会報目次][年頭のご挨拶][国土交通省税制改正主要項目][税制改正要望実現総決起大会]
[不動産取引情報の提供のあり方][視察団の報告][習得研修会]
[中堅営業管理職研修][不動産の公正競争規約説明会][近畿圏実力アップ講座]
[会員の皆様へのお願い][FRKNOW][登録講習][書籍紹介][INFORMATION]